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公取委、巨大ITデジタルプラットフォーマー実態調査100ページに及ぶ報告書。アプリストア独占やオンラインモールなどの取引実態公表。

 公正取引委員会が巨大ITデジタルプラットフォーマー取引に関する実態調査の報告書を発表した。100ページに及ぶ報告書で、独占禁止法上問題になる恐れがある点を具体的に指摘している。

www.jftc.go.jp

オンラインモール運営事業者とモールに出店する事業者、アプリストア運営者とアプリを提供する事業者にアンケートや聴取による調査を実施し公表した。

 

10年で大変動した企業の時価総額

報告書の冒頭に、この10年で世界の企業の時価総額の上位が激変している報告をしている。10年前まではエネルギーや金融などの企業が上位を占める中、2018年にはTOP10中6社がデジタルプラットフォーマーが占める。

6社の合計時価総額が419兆円と、2008年上位10社の時価総額293兆円をも超えている。4位のマイクロソフトもOSやクラウドサービスなどを提供しており、実質は3社の金融以外はIT関連企業という影響力だ。

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調査への情報提供は900件以上

2019 年1月 23 日からデジタル・プラットフォーマーに関する取引慣行等に関する情報を幅広く収集・把握する情報提供窓口をWebに設置。

 914 件の情報提供(2019 年9月 30 日時点)

  • オンラインモールに関する情報 795 件
  • アプリストアに関する情報 20 件
  • その他の情報 99 件 

オンラインモールやアプリストア取引実態アンケートも

2019年2月~3月に利用事業者及び消費者向けアンケート調査が実施された。

  1. 利用事業者に対するオンラインモール運営事業者の取引実態
  2. 利用事業者に対するアプリストア運営事業者の取引実態
  3. デジタル・プラットフォームサービスの利用者に対するアンケート調査

アプリストアは主にAppleGoogleになるが、オンラインモールは日本ではYahoo、楽天などの利用が多く、国内企業も対象となっている。

運営事業者や利用事業者の100件ほど聴取も

運営事業者の取引実態に関する情報を収集・把握するため、合計 93 名に聴取調査を実施した。

  • オンラインモール運営事業者 5名
  • オンラインモール利用事業者 42名
  • アプリストア運営事業者 3名
  • アプリストア利用事業者 43名

特に、利用事業者からの聴取内容が生々しい。かいつまんで紹介してみたい。

運営事業者の地位からくる独禁法上の問題

市場における有力な地位

利用者が多いほど利用事業者も集まり、利用事業者が多いほど消費者が集まる。
「取引先の事業活動を制限し得る行為」は市場において有力な地位を占める運営事業者が行うと不公正な取引方法として独占禁止法上問題となるおそれがある。

独占・寡占的な地位

市場における有力な地位から更に市場シェアが拡大すると、品質・品揃え・手数料等で競争相手が弱くなると考えられる。
「競合事業者を排除し得る行為」 は独占・寡占的な地位を占める運営事業者がこのような行為を行うと、私的独占として独占禁止法上問題となるおそれがある。

優越的地位

自己の取引上の地位が優越していると、地位を利用し不当に不利益を与えることで、相手方の自由かつ自主的な判断を阻害し競争上不利にさせ、公正な競争を阻害するおそれがあり、優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題となるおそれがある

オンラインモールへの警鐘

◆出店事業者からの指摘

検索表示などでモール運営事業者自身や関連会社を優遇している

◆モール運営事業者の反論

検索アルゴリズムは公平に評価している

公取委はモール運営事業者への見解

検索順位を決定する主なパラメーターとそのウエートを明らかにするよう求め、恣意的なアルゴリズム独占禁止法上問題になる恐れがあるとの考えを示す

アプリストアへの警鐘

◆アプリ提供事業者からの指摘

消費者がアプリストア外のWebサイトを通じてアプリをダウンロードしようとすると警告画面が表示される

◆アプリストア運営者の反論

警告は消費者の安全性を確保するためのものであり、競争を阻害するものではない

公取委のアプリストアへの見解

アプリストア外のダウンロード制限が競合他社を不当に妨害するために行われる場合には、独占禁止法上問題となる恐れがある

オンラインモール利用事業者の苦悩

  • オンラインモールへの取引依存度が圧倒的に高いく切り替えるできない
  • オンラインモールは集客力に魅力がり文句があっても利用するしかない
  • 消費者が当社のウェブサイトを見つけるのは難しい

アプリストア利用事業者の苦悩

  • アプリストアが寡占状態で売上の半分以上をあるアプリストアに依存
  • アプリストアでないと消費者にアプリを普及させることは難しい
  • 運営事業者の言いなりになっている感じはあるが仕方ない
  • 何か文句言って削除されるのが怖く何も言えない

オンラインモール・アプリストア利用事業者の感じる疑念

  • 取引先に不利益を与え得る行為
  • 競合事業者を排除し得る行為
  • 取引先の事業活動を制限し得る行為
  • 公正性・透明性に欠けるおそれのある行為

オンラインモール利用事業者の感じる疑念

  • 倉庫内における商品の破損・紛失への対応
  • 広告枠の購入要請
  • 規約違反に対するペナルティ制度

アプリストア利用事業者の感じる疑念

  • 他のアプリストア等の利用制限
  • アプリ内課金手数料の設定とアプリ外決済の制限
  • 販売価格の階層設定

報告書はデジタルプラットフォーマーへの牽制

世界でその支配力を問題視されるデジタルプラットフォーマーや、国内の各分野の優位的地位を築いているアプリやサービス運営事業者への牽制の意味合いが大きいと感じる。

公取委は2019年に入ってからだけでも、旅行サービスやグルメ比較などの運営事業者へ調査を実施している。2020年代を目前にこれから注視していきたい。